“お客様が理解できる言葉”で説明しているか?
営業を少しでも経験していれば「お客様にわかりやすく説明したほうがいい」と言われたことがあるだろう。もしくは「できるだけ専門用語を使わないように」と注意されたかもしれない。
しかし、経験が3年、5年、10年と長くなり、経験を積むとどうしても“業界用語”をそのまま使ってしまうことが増えてしまう。

たとえば金融業界の営業スタッフが「この商品はインデックスファンドで分散投資が可能です」と説明したとする。知っている人にとっては常識の言葉だが、初めて投資をする人からすれば「インデックス?ファンド?分散?」と理解できない。
できる営業スタッフは「インデックスファンドという商品がありまして、有名な株価の平均に合わせて運用する、初心者向けの投資商品です」と言い換える。これなら初心者のお客様でも理解できる。
どの業界でも専門用語は“自分たちの中だけで通じる言葉”であって、お客様にとっては“わかるようでわからない”言葉なのだ。これが、営業の世界で大きな落とし穴になる。
私は通信講座という営業担当者向けの勉強会を実施している。ある日、受講者であるハウスメーカーの営業担当者に、普段お客様におくっているお役立ち情報の内容を見せてもらった。すると、こんな言葉が書いてある。
「スラブが……」
「ラーメン構造が……」
業界に長くいる人であれば、何の違和感もなく使う言葉かもしれない。しかし、これを読んだお客様の反応はどうだろう。
「スラブって何?」
「ラーメン構造? 麺みたいな構造をしているってこと?」
スラブとは、天井と床が一体化した部材のこと。ラーメン構造とは、柱と梁(はり)が一体になっている構造のこと。
「ラーメン」と聞くと、多くの人は食べ物を連想するが、これはドイツ語で「枠」を意味する言葉だ。建築関係の方なら当たり前だが、お客様にそのまま伝えてしまうと、まったく伝わらない。これではどんなにがんばって情報提供してもまったく効果はないし、逆効果になることもある。
そんな私も業界用語をそのまま使って、失敗した経験がある。